漢方では体全体の潤いを“血(けつ)”と言います。昼間に消費して減るので夜に再生産しないといけませんが、寝る時間が短いと、作る時間が短いということになり、血は必ず減ります。
血が減ると、乾いた体質になり、ストレス・怒り・ピリ辛などの火が付き易くなります。
火は上に上る性質があるので、頭まで上がって来ます。
頭が熱いのは起きている状態で、眠る時は頭を冷やす必要がありますが、頭に火が達して熱
くて冷やせなくなるので、不眠となります。
頭が熱いので眠れない、眠れないので血が不足して乾く、乾くのでますます火が燃える、
その為ますます眠れないという悪循環に陥ります。
眠れないので起きるとか、眠くなるのを待って遅くまで起きているとかすると、睡眠時間が短くなって、血が減り、益々不眠はひどくなっていきます。
不眠を治す時には発想を逆転させることが必要です。
眠れないからもっと長く布団に入って、睡眠の質の悪さを睡眠の絶対量でカバーします。
2時間のうたた寝でも、1時間の熟睡に相当すれば、1時間分血は増えます。
眠れないからと起きてしまうと、血は全く増えません。
女性では現状維持の為の睡眠時間が7時間から7時間半、男性では6時間半から7時間必要です。不眠を治す時は、血を増やす為に、一旦睡眠時間を1時間は上乗せする必要があります。女性は8時間半、男性は8時間です。
漢方薬は、血を増やす薬と、頭の火を消して、睡眠を安定させる薬を使います。睡眠薬と違い、ふらついたり、次の日に残ったりしないのが、メリットです。
一晩に眠れないのが1時間くらいなら更に1時間布団に入る時間を上乗せすればよいのですが、2時間以上眠れないとさすがに布団に10時間以上入るのは難しくなってきます。
その場合は、漢方薬だけでなく、現代医学の睡眠薬を一時的に組み合わせることもあります。睡眠薬を使っても、現状維持より1時間多く眠れると、毎日1時間分ずつ血が増えるので、十分に血が増えた段階で、睡眠薬を半分に減らし、その2週間か1か月後に睡眠薬をゼロにできます。その後は睡眠用の漢方も減らしていき、最終的に薬は要らなくできます。
逆に、やってはいけないパターンは、睡眠薬で眠れる事に安心して、布団にはいる時間が7時間半より少ないケースです。この場合、一時的には眠れても、7時間半より少ない分血が減って行き、眠っているのに不眠は進むという矛盾が出ますので、やがて睡眠薬も効かなくなってきます。
初めは必ず布団に入る時間を増やしましょう!