月経不順は3タイプに分けられます。
①月経が遅く来る・・・子宮に血が貯まるのが遅い
②月経が早くなる・・・出血し易いため、月経が早く始まる
③月経が早く来たり、遅く来たりする・・・①②の混在
①月経が遅く来る場合
漢方では体全体の潤いを“血(けつ)”という字で表します。昼間体を動かして消費して減っていきますから、次の日に使えるよう夜に再生産しておく必要があります。寝ている間に胃腸が血を再生産しているので、寝る時間が短いと、作る時間が短いということになり、血は必ず減ります。また仮にきちんと寝ていたとしても、胃腸が作っているので、冷たいものやぬるいものを飲食して胃腸が冷えて弱いとか、甘いものなどを食べて胃腸が重くて弱くなったりすると、血を作るスピードが落ちてしまい、これも血が減ってしまいます。
月経が遅れる場合、主に3つの原因があります。
(1)血虚(血の不足)
血が充分にあると、順調に子宮に血を貯めて、28日から30日で一杯になり、月経が始まります。
反対に、血が不足していると子宮に血を貯めるのに時間がかかるので、血が少ない分だけ月経が遅れます。
(2)肝気鬱結(ストレス)
ストレスがかかって肝の気が鬱滞して止まると、血を順調に動かして巡らせる事ができなくなるので、子宮に血を貯めるのに時間がかかり、月経が遅れます。
(3)瘀血
血の流れが悪くなり、血が止まり易くなったり、止まって固まった状態を瘀血と言います。血管中に瘀血があると、川の中の大岩のように血の流れを邪魔して、血が子宮に届きにくくなり、月経が遅れます。
月経が遅れる場合、一番多いのが(1)の血虚で、これに(2)の肝気鬱結が重なっている場合もよく見かけます。(2)の肝気鬱結だけや、(3)の瘀血だけによる月経の遅れはあまり見かけません。
月経が遅れる分だけ、血が不足していると考えてもよいくらいです。
月経が遅れる理由は、ほとんどの場合血の不足で、その原因は主に寝不足です。ですから、睡眠を増やして血を作る時間を増やし、血を増やす漢方薬で血を作るスピードを上げれば、必ず血が増えて月経周期は正常になります。
女性は月経で血を失うので、それを取り戻す為に男性より30分は多く寝る必要があります。治った後は7時間くらいでいいのですが、今は1時間上乗せして8時間、胃腸が弱い場合は8時間半寝る必要があります。月経の遅れが1週間くらいならこのくらいでよいのですが、2週間以上遅れる時は、睡眠を更に増やして9時間寝ると、一気に月経不順が治ってきます。3か月くらいで戻ることが多いです。
②月経が早くなる場合
月経が早く来るのには、2つのパターンがあります。
❶ 脾虚 脾不統血により早く出血が始まる
❷ 血熱 血熱妄行により早く出血が始まる
❶ 脾虚 脾不統血の原因
(1)脾陽虚寒 元々脾(現代医学の胃腸)を温める力が弱いところに、冷たいものの飲食で脾が冷えて弱り、出血。
(2) 気虚下陥 心身の過労で気を消耗して気を持ち上げることができなくなり、脾の気が下向きに落ち込んで出血。
(3)思慮傷脾 精神的なショックで脾が傷ついて弱り、出血。
(1)が一番多く、時々(2)も見かけます。(3)は肉親の死などで稀に起こります。
❷ 血熱妄行による出血
トウガラシや胡椒などのピリ辛や、肉・油の摂り過ぎで、血に熱が籠って血流が激しくなり過ぎて、弱い血管を突き破って出血します。寝不足やストレスなどの虚熱による場合もあります。
中国では血熱妄行による出血が多いようですが、日本ではほとんど全てが脾虚による出血で、その中でも冷飲食による脾陽虚寒の原因が一番多いようです。
皮膚温は36.5℃で、胃腸(漢方用語の脾)の温度はこれより0.5℃高くて37℃です。37℃より温度が高いものを飲食すると、熱をもらって胃腸が温まりますが、37℃より低いものを摂ると、その分熱を奪われ温度が下がるので、胃腸が冷えてしまいます。薬で温めても、飲食物で冷えると、綱引きになって、胃腸は温まりません。薬と飲食物の両方で温めると、どんどん治って、薬が要らなくなります。
③月経が早く来たり、遅く来たりする場合
血の不足があれば月経が遅れ、胃腸の冷えがあると月経が早く来ます。この両方の要因があると、月経が早く来たり遅く来たりします。
治療は血を増やすと同時に、胃腸を温めて出血しにくくすることです。
月経不順は適切な診断でその原因を見極め、それに応じた漢方薬を使うと同時に、睡眠を増やしたり温かいものを飲食したり、日常生活の改善も必要不可欠です。日常生活を改善すれば、早く治って、漢方薬も要らなくなります。
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