不妊症の漢方治療

妊娠をする為には、胎児を育てる子宮にエネルギーである『気』や血液が充分に届き、循環する必要があります。
また、子宮が胎児を保つ力を充分に持つことも必要です。
これがうまくいかないと、妊娠出来なかったり、流産を起こすことになります。
『気』や血液が少ない時は、子宮に充分届きませんので『気』や血液を増やす治療をします。
『気』や血液の流れを邪魔するものが存在する時も『気』や血液は子宮に届きません。
邪魔をするものとしては、冷え・粘って流れを邪魔する痰湿、血液を止めて邪魔する瘀血(おけつ:血の道症とも言います)、うつうつして気を止める気滞などがあります。
冷えは自分で暖める力が弱い場合や、外の激しい寒さに晒された場合に生じ、河の流れを凍らせるように『気』や血液の流れを止めてしまいます。
治療には暖める漢方薬を使ったり、お灸で直接『気』や血液の流れる路を暖めます。
痰湿とは、粘る性質を持つ要らない液体で、湿気の様なものです。酒・肉類・乳製品など粘る性質のものを取りすぎたり、それらを排出する為の野菜の繊維が少ないと溜まってきます。
また、胃腸が冷えて弱った場合も痰湿を排泄する力が弱るので痰湿が溜まります。
治療には痰湿を体から出す漢方薬を使ったり、痰湿を減らすツボにお灸をします。
食事療法として、野菜を増やし肉類や乳製品の割合を減らす事も大切です。
瘀血(おけつ)とは、血液が粘ったりかたまってしまった物を言い、この為次にくる血液が邪魔されて通れなくなる厄介なものです。
治療は主に漢方薬で、血液を溶かしたり塊を散らす様にします。
気持ちがのびのびしている時は、エネルギーである『気』の流れも良いのですが、ストレスがかかったり心配事があると気持ちがうつうつとして『気』の流れが止まってしまい『気滞』という状態になります。
『気』が止まれば血液も止まってしまい、子宮には届きません。
治療はストレスを散らしたり『気』を強制的に流す漢方薬を使います。
針治療の場合は、ストレスを散らすツボに少し痛い刺激を与えます。
日常生活では運動をして『気』や血液の流れを良くしたり、楽しい事を考えて気分をのびのびさせる事も必要です。
漢方では生殖に最も重要な臓器は腎臓とされています(現代医学の腎臓と重なっているところと、異なるところがあるので、あくまで漢方用語の腎臓です)。この腎臓が弱いと子宮自体が弱くなりますので、その時は腎臓を強くする漢方薬や鍼灸で治療します。
実際の不妊症はこれらの要因が単独で存在することは少なく、いくつもの要因が複雑にからまっており、診断が最も重要になってきます。
漢方薬を使うときも、簡単なエキス剤で済む場合もあれば、昔ながらの煎じ薬を使う必要があることもあります。

男性不妊症の場合は、精子を作る能力が落ちている場合が多く、漢方的には腎臓を温めて力を高める漢方薬を使いますが、エキス剤には入っていない薬が必要な時は、煎じ薬を処方することもあります。